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2024.1.26 07:00ゴー宣道場

伝統とはただ続けること…では全然ない

「伝統」の言葉を調べてみると、
「ある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄。また、それらを受け伝えること」とありました。(小学館デジタル大辞典)

一言では言い表せない難しいものですが、この点については、『天皇論』でも引用された、上皇后陛下がおっしゃっていたことがとても腑に落ちます。
「伝統と共に生きるということは、時に大変なことでもありますが、伝統があるために、国や社会や家が、どれだけ力強く、豊かになれているかということに気付かされることがあります。
一方で型のみで残った伝統が、社会の進展を阻んだり、伝統という名の下で、古い慣習が人々を苦しめていることもあり、この言葉が安易に使われることは好ましく思いません。 」

このお言葉は、ご結婚50年の時のもので、こちらで全文を読むことができます。

天皇皇后両陛下御結婚満50年に際して(平成21年) – 宮内庁 (kunaicho.go.jp)
https://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h21-gokekkon50.html

もともとは記者からの「皇室の伝統についてお聞かせください」という質問で、まず上皇陛下が「天皇の在り方としてその望ましい在り方を常に求めていく」ということをおっしゃっており、それに続いての上皇后陛下のご発言になっています。

今回は、このお言葉を軸に、かつ自分の身の丈に合ったところから伝統について考えてみました。

映画には、伝統のシリーズというものがあります。
007、ミッション・インポッシブル、ゴジラ、ワイルド・スピード、トイ・ストーリー、バットマンなどなど。
まだまだありますが、上記に挙げた作品をざっと見ても、少なくとも今も生きているシリーズは、原作者の手から離れても、ただ同じことを繰り返すのではなく、その在り方が常に模索されていることが感じられます。
逆に新しいことが思いつかずに同じことを繰り返していて、あるいは単純に面白くなくなり、終わってしまったシリーズも思い浮かびます。

ゲームにも、伝統と呼べるほど続いているタイトルはたくさんあります。
マリオ、ゼルダ、ドラクエ、ファイナルファンタジー、バイオハザード、桃太郎電鉄、どうぶつの森、ポケットモンスター、メタルギア、ペルソナ、ファイアーエムブレム、ソウルシリーズ、等々。
これらもいずれかを知っている人なら百も承知だと思いますが、魂の部分は残しつつ、シリーズの在り方を模索して、その都度新しいことに挑戦して取り入れています。
そうしなければ何十年も残っていくことはありませんし、同じことをやっていたのではシリーズ自体が終わっていたのは明らかです。
これについては、以前に紹介したゲームクリエイターの桜井政博氏も、続編というものについてこう発言されています。
「ただそのまま出すと 売上げは約半分になると思ったほうがよいでしょう」

こういったことは、もちろん漫画でもアニメでも当てはまるかと思います。

食べ物にいきます。
さらに無数にあるので困りますが、わかりやすいところでいちご大福は、大福という伝統的な食べ物を現代に合わせてアップグレードしたものですね。
もし「あんこ固執派」「あんこ原理主義者」がいたら、確実にいちご大福はありませんし、大福自体も、消滅まではしないとしても、今ほどの存在感はなかったでしょう。

宮城県に「松かま(松島蒲鉾本舗)」という、80年以上続いているカマボコ造りの会社があります。
伝統的な笹かまを大事にしつつも、新商品の開発にも力を入れています。
僕が衝撃を受けたのが、こちらの「どらぼこ」です。

平たく言うとカマボコの材料で作ったどら焼きで、新感覚スイーツになっています。
カマボコの新たな展開を考えた上で生まれた商品であろうことは想像に難くありません。

愛知県の豊橋には牧原製菓というバームクーヘン造りの会社があります。
こちらはもともとはOEMという、他社のブランドの製品を製造している会社でした。
その性質上、誰が食べても美味しい、けれど没個性のものが求められていたそうですが、全力で作ったものを届けたいという思いから、b’lab(ビーラボ)という自らのブランドを作ったとのことです。
こちらのハードタイプバウムクーヘンの『TABOO』は、バームクーヘンの固定観念を破壊する美味しさがあります。
こちらもやはり同じことの繰り返しから脱却して、挑戦していく気概を感じさせます。

香川県の丸亀は、うどんだけでなく、骨付き鷄が名物です。
これは1950年代から始まったそうですが、地域の名物として、伝統の郷土料理として定着しています。

僕はご当地もののご飯のお供が好きなのですが、福島からは『うまくて生姜ねえ!!』というヒット作も生まれています。何にでも合う万能調味料です。

 

愛知県豊川市の企業が蒲郡市の高校とコラボして作ったごはんジュレもオススメします。

 

こういったものも、地域に根ざしつつ、創意工夫をこらして作られた商品です。

地域といえば、駅弁には「おクニ自慢」が込められていて、伝統的な食材が詰まっていることは『ゴー宣2nd』の1巻目にある通りです。

つい食べ物ネタが多くなりましたが、こうして新しいものを生み出したり、改善を重ねていくことは、製造業も同じで、零戦もそうでしたし、自動車も、新幹線もそうですよね。
ちなみに新幹線は開業以来、重大な脱線転覆事故は起こしていません。それも多くの関係者が安全に気を配りながら日々運行しているからこそです。
北朝鮮では年末に数百人の死者が出る大規模な列車事故が起きていたそうですが、ろくに報道もされない有様です。

やっぱり伝統は同じことの繰り返しではないなと思っていたところ、このようなブログを見つけました。

「伝統を守るとは?」日本文化の仕事を7年やってきて気付いた「伝統文化を守るための考え方の共通点」|吉田 亮@ホトカミ運営代表が神社お寺の明るい話題をお届け! (note.com)
https://note.com/samurairyo/n/n41291e300415

この記事によると、「伝統を守るとは、大切なものを守るために時代に合わせて表現方法を工夫すること」とあります。
ストレートに、伝統を受け継ぐとはずっと同じことを頑なに守り続けていくことと思う方もいるかもれないが、しかしそうではない、といったことも書かれています。
わざわざ図を描いて、「大切」と「時代に合わせる」が重なる部分が大事だと説明されています。
上皇上皇后両陛下がおっしゃっていたお言葉とも一致します。

そしてこういったことは、いわゆる伝統と呼ばれているものでなくても、普段の仕事でも同じということに思い至ります。
考えなしに同じことを、たとえば上司から指示されたこと、昔からそうと決まっていることを、あるいは昨日と同じことを、ただ繰り返していて、それが”いい仕事”になるでしょうか?
もちろんとにかく逆らえという話ではありませんが、いい仕事をするためには、「自分の頭で考える」ことは必須でしょう。

こうして考えていくと、「とにかく伝統は変えるな」などと叫んでいる男系派というニセの保守は、いい反面教師になりました(過去形)。
今日も人生に一切役に立たないニセ保守の妄言は無視して、しっかり自分が目指すところを決め、論理的思考や創意工夫をこらして、いい仕事をしていきたいと思います。

 


 

 

 

【トッキーコメント】
どこを守り、どこを変えれば伝統は守られるのか?
常にバランスを考えていなければならないのだから、これは相当に難しいことです。
だから、頭の悪い人が「何も変えるな!」と言い出すのは、非常に分かりやすい。それが一番楽ですからね~。
でも、楽して続けられるものなんかありません。当たり前の話ですが。

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